スマイリーキクチ ネットで殺人犯に仕立て上げられた10年間

 

スマイリーキクチ(1972年1月16日 – )は、日本のお笑いタレント。

スマイリーキクチ中傷被害事件

スマイリーキクチが、1999年から2009年までの約10年間、ネット上で「キクチが殺人事件の犯人である」と誹謗中傷を受け続けた事件。この事件は、ネットにおいて1人の人間に対して誹謗中傷をした複数の加害者が一斉摘発された日本で初めての事件となった。

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1999年春、事件の発端

スマイリーキクチは1999年春から、キクチが女子高生コンクリート詰め殺人事件の犯人であると、ネット上の匿名掲示板などで中傷されるようになった。

女子高生コンクリート詰め殺人事件(1988年11月から1989年1月の間に、東京都足立区綾瀬で起きた、少年たちによる女性監禁・殺害事件。以下、コンクリ事件)

キクチは、所属事務所でマネージャーに呼び出され、自分がネット上でコンクリ事件の殺人犯にされていることを初めて知らされた。

掲示板には「凶悪殺人の共犯者、スマイリー鬼畜、氏ね」「殺した過去を思い出せ、白状して楽になれよ」、犯人の実名らしきものを並べた中に「菊池聡(現在芸人)」などと書き込まれていた。

コンクリ事件は、犯人たちが未成年で匿名報道であったが、ネット上では、犯人の実名などを載せて世間に広めるなど、犯人を糾弾する活動が存在した。その中で、「出身地が足立区」「犯人と同世代」「元不良・元暴走族」「キクチがコンクリ事件をお笑いのネタにしていた」といった真偽不明の情報を根拠に、ある者達によって、キクチはコンクリ事件の犯人として仕立て上げられていった。

所属事務所は対策をとり、「スマイリーキクチは事件とは一切関係がない」と事務所のホームページで否定し、ネットの掲示板の運営元にも削除依頼を申請したが、「スマイリー鬼畜さん、火のない所に煙は立たないよ」「貴様が犯人じゃないという証拠をだせ」など、中傷はかえってエスカレートした。さらに、ネットの掲示板の運営元は「事実無根を証明しなければ削除に応じることはできません」として申請を拒否した。(これが後に、コンクリ事件のキクチ犯人説を信じた者達からのバッシングのエスカレート、テレビ局や番組・CMスポンサーへの抗議などにつながる。)

やがてライブ会場の客にも変化が出始め、キクチを見て殺人犯だとヒソヒソ話すようになった。そこでキクチは、短い出演時間を削り、自分は事件とは無関係であると必死に弁明した。しかし、ネットでの誹謗中傷は、匿名掲示板のほか、キクチの所属事務所の電子掲示板にまで及ぶようになる。事務所の掲示板には「スマイリー菊池。許さねぇ、家族全員、同じ目に遭わす」「スマイリー鬼畜は殺します」など脅迫や殺人予告のような内容まで書き込まれ始めた。

2000年、警察への相談

四谷警察署

こうして2000年6月、キクチは警察に相談した。しかし、当時のインターネットの普及率は20%程度、この警察ではワープロを使っていた時代で、インターネット犯罪をあまり扱ったことがない様子だった。キクチは経過を報告し捜査結果を待つことに。その間にも、誹謗中傷の書き込みは増え続け、キクチはみんなが敵に見えるようになり、精神的に追い詰められていった。そして、恐怖とストレスで神経性胃炎を患う。

警察は膨大な書き込みの中から5件の書き込みを特定できたが、関西の有名国立大学や海外などの発信元の特定に止まり、特定の人物を突き止めることはできなかった。当時は、インターネット犯罪に関する法整備が不十分であったため、警察としては書き込んだ人物の特定が難しかった。

結局、書き込みをした人物は特定できずに捜査は打ち切りになった。

キクチは、中傷している人たちを相手にしていると気持ちがすさむとして、インターネットと一切関わらないようにする生活を選んだ。

そんな中、2004年にヨン様(ぺ・ヨンジュン)の物まねでブレイクし、平穏な生活を取り戻したかのように思えた。

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2006年、視聴者からの抗議電話

しかし、中傷が過熱していた頃から6年以上がたった2006年、あるテレビ番組にキクチが登場すると視聴者から「殺人事件の犯人をテレビに出すな」などの電話が殺到する。別の番組に出演しても同様の電話が殺到した。そして、出演していたCMのスポンサーにまで抗議の電話がひっきりなしに掛かってくるようになり、仕事は激減した。

キクチは、何年もこのような事がなかったので、事件がとっくに終わっていたと思っていた。

2008年1月、ブログの開設

2008年、誹謗中傷の不安もあったが、キクチはブログを開設する。開設理由は「ネットでさんざん嫌な思いをしたが、ブログで自分の言葉を発信すれば、『殺人犯スマイリーキクチ』の汚名を晴らせると思った」ためであった。しかし、ブログ開設からわずか数日でブログにはおびただしい数の誹謗中傷が殺到した。

その中には、何度も同じ人物の名前で書き込まれているものがあった。その名前は、コンクリ事件について記述した本『治安崩壊』(2005年)を出版していた北芝健の名前であった。北芝は、元警視庁刑事としてテレビコメンテイターなどで活動していた。

北芝健『治安崩壊』

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『治安崩壊』には、コンクリ事件の犯人について「少年グループの一人は刑期を終えた後、2004年7月、再び、恐喝事件を起こして逮捕された。もちろん社会に出てきたのはこの一人だけではない。一足早く出てきた別の男は、お笑い系のコンビを組んで芸能界でデビューしたという」という記述があり、それ以上詳しいことは書かれていなかった。北芝の本には情報源が全く明記されておらず、「お笑い系のコンビを組んで芸能界でデビューした犯人」についての個人を特定する詳細なプロフィールは書かれていなかった。しかし、キクチの経歴と本の内容が一致していて、それがキクチを連想させる表現であったために、コンクリ事件の犯人の仲間である根拠とされるようになった。

※掲示板に書かれているスマイリーキクチのいい加減な噂を、中傷犯と同じように北芝も信じてしまった、というのが真相のようである。

2008年4月、警察への相談

『治安崩壊』を読んだキクチは、中傷する者たちがコンクリ事件のキクチ犯人説を本気で信じていることに気づく。精神的にも限界で、彼らに襲撃されることを懸念したキクチは、仕事が終わるとすぐに帰宅するようになった。

2008年4月、キクチは再度警察に相談。警視庁のハイテク犯罪対策捜査センターや中野署の生活安全課に相談したが、「(キクチを)本気でコンクリ事件の犯人と信じている人はいない」「削除依頼をして様子を見ましょう」「様子を見ればネットの誹謗中傷は落ち着く」「(芸能人の)有名税みたいなもの」「(キクチは)インターネットなんてやらなければいい」「殺されそうになったとか、誰かが殺されたとかがないなら刑事事件にはできない」「殺されたら捜査しますよ」と言われ相手にされなかった。

『治安崩壊』の出版社に抗議するが、こちらも取り合ってもらえず。

所属事務所内での風当たりも強くなって、ブログを休止することにした。

すると、追い討ちをかけるように、ゴシップ専門の出版社が運営している芸能サイトが「スマイリーキクチ ブログ休止の真相は足立区殺人事件の主犯格が出所するから!?」という内容の記事を書き、それが、色々なサイトにコピーされて広まっていった。噂が広まるにつれ、身近な芸人仲間からも疑いの目を向けられ、その影響は兄弟の子供が通う幼稚園まで及び、そこの親たちの間でも噂されるようになった。

弁護士に相談

キクチは中傷犯を特定するために、インターネット事件に強い弁護士事務所に相談した。

弁護士は、キクチに、中傷書き込みをした者を特定するためには相当の根気と労力が必要であると説明し、正体不明の中傷犯を暴くよりも、キクチの疑惑を晴らせれば、噂はなくなる。そのために、本の出版社と争い、それが大きくマスコミに取り上げられれば、キクチが殺人事件の犯人でないことが世にアピールできると助言する。

弁護士のアドバイスにより、キクチは民事訴訟を起こす決意をする。

しかし、民事裁判の準備を進める中で、法律関係の本を読んだキクチは、やはり脅迫や名誉棄損も刑事事件であることに気付く。「こんなに脅迫されているのに、なぜ民事で戦わなければならないのか」「どう考えても、やっぱり警察に捜査してもらうべきだ」。

そして、もう一度警察に行こうという思いに至る。

2008年8月、再び警察へ相談

中野署

キクチは、再び中野警察署を訪れた。そこで出会った刑事はこれまでと違い、ネット犯罪に詳しく、真摯に対応するとともに、所轄に連絡してキクチが犯人グループにいなかったことも証明した。(担当刑事がコンクリ事件に関する資料を取り寄せ、犯人及びその仲間に「きくち(菊池・菊地)」という名前がないことと出所後に芸能界入りした者が犯人にいなかったことが確認されている。

2008年8月15日、刑事のアドバイスに従って、キクチはブログに「これからも、僕が事件の犯人である、関与している、事件をネタにしたなどと事実無根の内容を書き込むのであれば刑事告訴をします」と書き込んだ。ここまで書いても書き込みを続ける者は特に悪質だというアドバイスだった。

公開から3日後、「あんた殺人犯 死ねば」と書き込みがされる。キクチは刑事に聞いた方法でその発信元を一つ一つ確認し、記録した。

警察が最初に身元をつきとめた中傷犯は、最初は「二度としません」と反省したが、その3時間後にはまたネットで中傷を書き込むなどした。当初警察は、ネットの中傷は注意をすれば収まると考えていたが、その後、ネット中傷依存が深刻ととらえ「悪質性の高い書き込みを厳選して、該当する者は一斉摘発する」方針に切り替えた。

2008年9月、検挙

9月末、ついに警察は検挙に踏み切った。2008年9月から2009年1月までにキクチに対する中傷犯19人が検挙された。中傷犯たちは、北は北海道から南は大分県まで全国に幅広く存在し、警視庁の刑事が実際に出向いて摘発した。

その中には

・悪質な書き込みをしていた関西の国立大学の職員
・妊娠中の23歳のパート事務員の女
・外資系自動車メーカーのディーラーでIT部門を任されている責任者の男
・29歳派遣社員の女
・小学生の娘を持つ41歳の会社経営者の男
・大手家電メーカーの下請け会社に勤める女など

年齢は半数近くが30代後半だったが、下は17歳から上は47歳まで、一見普通の社会生活を送っている人物ばかりであった。取り調べをした刑事は中傷犯たちについて「どこにでもいる、おとなしそうな感じだった」、キクチは警察から見せられた中傷犯たちの顔写真について「怪しい目つきの2人を除き、どこにでもいる普通の人」という印象を持った。

書類送検

2009年3月27日までに、起訴できる見込みがあると警察が判断した7人の中傷犯が検察に書類送検された。名誉毀損容疑で書類送検された4人の中には、キクチを中傷しただけでなく、殺人事件を茶化し、被害者を冒涜した者も含まれていた。

神奈川県川崎市の29歳の女性派遣社員(脅迫容疑)
大阪府高槻市の45歳の国立大学男性職員(名誉棄損容疑)
東京都東村山市の46歳の会社員(名誉棄損容疑)
埼玉県戸田市の36歳の会社員(名誉棄損容疑)
神奈川県横浜市の46歳の左官業男性経営者(名誉棄損容疑)
埼玉県入間市の36歳の男性鉄筋工(脅迫容疑)
東京都練馬区の23歳の元パート女性事務員(脅迫容疑)

犯人の動機など

コンクリ事件キクチ犯人説を信じてはいないが面白半分で中傷コメントを書いた、という1人を除き、中傷犯たちはネット上で流布されていたキクチ犯人説を信じていた(前述の北芝の本を根拠としていたのは8人)。

警察は彼らに対し「キクチ氏とコンクリ事件は無関係で、ネット上のキクチ犯人説は事実無根」と知らせた上で、北芝の所属事務所と本を出版した河出書房新社からの「キクチ氏とコンクリ事件は無関係」とする内容証明を見せた。すると、中傷犯たちは「ネットに騙された」「本に騙された」「仕事、人間関係など私生活で辛いことがありムシャクシャしていた」「離婚して辛かった。キクチはただ中傷されただけで、自分のほうが辛い」「他の人は何度もやっているのに、なぜ一度しかやっていない自分が捕まるのか」などと述べた。

スマイリーキクチ 誹謗中傷 犯人

「全部自業自得なんだが…。某お笑い芸人のブログに中傷書き込んで告訴された。
その芸人はある事件に関与している可能性があるという噂を信じて2ちゃんから飛び書いた。
私は一回しか書いてないから調書とるだけになる確率が高いらしい。
しかもその芸人が事件に関わったというのは事実無根だと刑事さんは言ってた。
死にたい。何やってんだろう。」

2009年2月5日 報道

スマイリーキクチ 報道nearfuture8.blog45.fc2.com/blog-entry-684.html

2009年2月5日にテレビ、新聞、スポーツ紙などの複数のメディアでキクチ中傷被害事件が大々的に報道された。ブログ「炎上」で一斉摘発するのは、警察庁によると「聞いたことがない」事案であった。

キクチ中傷被害事件の報道の少し前に、韓国の芸能人が相次いで自殺していたこと(2007年1月のチェ・ユニ、同年2月のチョン・ダビン、2008年9月のアン・ジェファン、同年10月のチェ・ジンシル)が注目されていたが、自殺した理由の1つにネットにおける中傷があると報じられていた。ネットの中傷によって韓国の芸能人が相次いで自殺した問題は報道機関では「日本でも起こりうる深刻な問題」と考えられており、ネット中傷という点で類似していたキクチ中傷被害事件が報道機関で大きく取り上げられる要因となった。

この報道で警察が「キクチはコンクリ事件と無関係」であることを発表したため、ネットではコンクリ事件のキクチ犯人説は事実無根の中傷であるという認識が広まり、キクチへの中傷書き込みは激減することになった。

10年もの間、悪質な言葉の暴力を受け続けたキクチであったが、こうして一つの終わりを迎える事ができた。

キクチは「約10年間にわたって、被害を受けてきました。今後、このような事件が起きないよう願ってます」とコメントを出した。

出典
スマイリーキクチ 『突然、僕は殺人犯にされた – ネット中傷被害を受けた10年間』2011年
『ザ!世界仰天ニュース』2012.12.19
wikipedia.org

-ネット犯罪  -

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